AIでWeb制作の仕事はなくなる?オワコン?2026年の現場から見た現実

AIでWeb制作の仕事はなくなる?オワコン?2026年の現場から見た現実

Gemini 3 をはじめとする生成AIのWebサイト生成が、ここ数ヶ月で一気に実用域に入ってきました。
SNSのタイムラインには「Web制作はもう終わる」という強めの予測が並んでいます。
結論から言うと、SNSに溢れる極端な言説には誇張や思惑が多く含まれていますが、一方で無視できない「地殻変動」が起きているのも事実です。
大切なのは、周囲の煽りを適切にフィルタリングしつつ、現場で起きている本質的な変化を見極めることです。
なお、この記事は名古屋を拠点に、Webのフリーランス/少人数チームとして、デザインから実装・サーバ運用までを一気通貫で請けている立場から書いています。
評論ではなく、日々この変化のただ中で手を動かしている現場の実感として、できるだけ煽りを排して整理してみます。

AIによるWeb生成は、もう始まっている

まず誇張ではない部分から。実際に手を動かして Gemini 3 ProでLPを生成させてみると、近未来的なデザインにホバーやインタラクションまで自然に組み込まれ、前世代では出せなかった水準のものが一発で出てきます。「和モダンな抹茶カフェ」のような曖昧な指示から、配色・レイアウト・CSSを推論して、動くHTMLとして仕上げてきます。
これは Gemini 3 に限った話ではありません。v0、Framer、Webflow AI、Figma のアシスト機能——「叩き台はAIでいい」は、すでに現実になっています。
だから次の領域は、普通に起きます。

  • デザイン案のバリエーション量産
  • 叩き台UIの即時生成
  • テキスト → 簡易LP
  • 非デザイナー(エンジニア・営業・ライター)でも“それっぽいもの”を出せる

ここは素直に受け入れていいと思います。

SNSの「終わる」煽りは、まず割り引いて読む

一方で、タイムラインに流れてくる「Web制作はオワコン」といった強めのポストは、少し冷静に距離を置いて見る必要があります。
こうした発信には、いくつかの定番の誇張があります。

  • 「Figmaは消える」
  • 「コーディングはほぼ消滅する」
  • 「デザイナーはほぼ不要になる」
  • 「上位0.1%しか生き残れない」

こうした「オワコン系」のポストが急増している背景には、発信者側の構造的な理由があります。
現在、SNSで過激に危機感を煽っている層の多くは、実務を行っている経営者や開発者ではなく、AI教材・商材・有料コミュニティへ誘導したい「情報商材系」の人たちです。
「煽り → 不安にさせる → 自分の商品を売る」という動線は完全にテンプレート化しています。

また、有名企業や大手発信者のポジショントークも混ざっています。「これからは制作よりコンサルだ」「上流の戦略が価値になる」という主張は、その会社自身が向かっているビジネスの方向性と一致していることが多いです。
自社の方向性に沿った未来を語るのは当然のことですが、読む側としては「技術トレンドの解説」と「自社のビジネス誘導」が混ざっている前提で受け取ったほうがいいでしょう。

もう一歩踏み込むと、「デザインの価値が下がる」という話そのものが、一部の発信者にとっては都合のいい文脈になっている場合があります。
たとえば、以前から「見た目の美しさや、ギャラリーサイトに載るようなデザインは、ビジネスの成果に大きく関係しない」と主張してきた人にとって、“AIでデザインがコモディティ化する”という流れは、“自分たちのこれまでの考え方は正しかった”という後付けの裏づけとして機能します。
これも立派なポジショントークです。

たしかに、Webサイトで数字(成果)やコンテンツが重要、というのはその通りだと思います。
ただ、だからといって視覚的な質が無価値になるわけではありません。第一印象や信頼感、ブランドの伝わり方は、今も成果に効きます。
「デザインの質は重要ではない」という主張もまた、「デザインこそすべて」という主張と同じくらい、発信者の立場込みで読む必要があります。

とはいえ、本質的な「危機感」は持っておくべき

商材系の煽りは割り引くべきですが、だからといって「今まで通りで大丈夫」と楽観視するのも危険です。
このトレンドの本質は、「作る作業」の経済価値が下がるということです。

単純な制作——量産バナー、LPの初稿、参考デザインの模倣——は確実に単価が落ちると予想されます。
1案件に何時間も手を動かしていた工程が、数十分の生成と調整に置き換わっていくからです。
制作のオペレーション(作業の速さや、綺麗なバランスを自力で整える力)を売りにしてきた人ほど、ここは正面から影響を受ける可能性があります。
周囲の過激なノイズに振り回されて現場とズレた判断をするのは避けるべきですが、ツールがもたらす地殻変動としての危機感は、前提として持っておくべきだと思います。

そして、この記事にもポジショントークがある

公平のために書いておきます。

この記事自体、「設計や実装にはまだ価値が残る」「制作会社や制作プレイヤーには追い風にもなる」という方向で書いています。
でも自分は現役の制作者です。だからどこかに、「そうあってほしい」「こうはなってほしくない」という願望が混じっている可能性があります。
煽る側に“商材への動線”というポジショントークがあるように、守る側にも“自分の仕事が価値を失ってほしくない”というポジショントークがあります。
方向が逆なだけで、構造は同じです。
一番危ないのは、煽りでも楽観でもなく、「自分にとって都合のいい予測」を無批判に信じてしまうことだと思います。

消えるのは「作業」、残るのは「設計」

実際に起きるのは、職種の“消滅”ではなく“再分配”に近いです。
減るのは「作る作業」の一部。むしろ価値が上がるのは、こちら側です。

  • 情報設計
  • UIの矛盾を整える調整
  • ブランドの統一
  • UXの意思決定
  • 顧客のビジネスとターゲットの理解
  • 「この表現で刺さるか」を判断する目
  • CMS統合・運用・本番環境の最適化

AIが綺麗なHTMLを吐いても、その後の「動く成果物として、破綻なく統合する責任」は泥臭く残ります。
バグ取り、アクセシビリティの担保、microCMS / WordPress / Shopify への緻密な組み込み、コンポーネント設計、サーバ設定、運用フローなどこのあたりが1〜2年で消えてなくなることはありません。(この“まだ”が何年続くかは、正直わかりませんが。)

実際、うちのような少人数のチームでも、案件の山場はAIが出したコードの“先”にあります。Nuxt と WordPress REST API を破綻なくつなぐ、サイトリニューアル時の 301 リダイレクトを `routeRules` で漏れなく整える、なりすまし対策として DMARC を `p=reject` まで詰める、PageSpeed を実用水準まで追い込む——こうした「最後まで動かし切る」工程こそが、納品物の品質を左右します。ここは “それっぽいコード” をポン出しできることと、別のスキルです。

「上流に行けば安全」とも限らない

ここで一点だけ注意したいことがあります。
「これからは制作よりも戦略・コンサルだ」という論調はよく見ますし、一見正しく思えます。
ただ、戦略やコンテンツ企画、WHO / WHAT / WHY の定義といった“上流”も、実はAIが得意なロジカルシンキングの領域です。上流に行けば自動的に安全地帯、というわけではありません。

それを象徴するのが、足元で起きているコンサル業界の淘汰です。東京商工リサーチによると、2025年の経営コンサルタントの倒産は170件で、2006年以降の20年間で最多を記録しました。生成AIの普及で、単純な資料作成や経営相談といった業務をAIが担いつつあることが、要因のひとつに挙げられています(参照:東京商工リサーチ)。
帝国データバンクの集計では、2026年に入ってもこのペースは衰えず、年間で過去最多となる600件超に達する可能性が指摘されています。

ただ、ここも丁寧に読む必要があります。淘汰されているのは、申請代行や汎用的な経営改善提案といった「差別化できないコモディティ作業」に依存していた事業者が中心で、専門性で勝負できるコンサルの価値は、むしろ高まっています。つまりコンサル業界で起きていることは、Web制作で起きることと同じ構造です——AIが食うのは“作業”の部分で、“差別化できる頭脳”は残る。

だから「制作はオワコンだから全員コンサルになろう」という単純化は、二重の意味で危ういです。逃げ込もうとしている上流もまた、汎用的な作業から順にAIに侵食されているからです。

道は「コンサル化」だけじゃない

進むべき方向は、ひとつではありません。
ひとつは、設計・意思決定・顧客理解という上流に張る道。もうひとつは、AIを使い倒して、破綻のない実装まで爆速で落とし込む「超高効率な実装者」になる道です。市場は後者も確実に必要としています。AIが出した“それっぽいコード”を、本番で破綻しない成果物に仕上げ切れる人は、むしろ希少になります。
どちらか一方ではなく、両方を握れるなら一番強いです。

デザインは消えない——「いきなり家は建てない」

ここは誤解されやすいので、はっきり書いておきます。
「AIがコードを直接出す」と聞くと、デザインの工程そのものが要らなくなる、と受け取られがちです。でも、実際は違います。

家を建てるとき、いきなり基礎を打つ人はいません。間取りや外観を図面やパースで見せて、施主と「これでいきましょう」と合意してから着工します。Web制作のデザインも同じで、「作る前に、方向性を見せて合意する」工程は、ツールがFigmaであろうとAIであろうと残ります。クライアントの確認・納得というプロセスは、技術が進んでも省略できません。

変わるのは、デザインの“必要性”ではなく、デザインを“作る速さと方法”です。これまで何日もかけて用意していた確認用のビジュアルが、AIで数十分で出せるようになる。デザインが消えるのではなく、デザインに到達するまでの時間が短くなる、というだけのことです。

Web制作者にとっては「両刃」

大規模なBtoB案件やデザインシステム前提の制作では、再利用と運用が本体なので、ハンドオフの仕組みは残ります。
ここは「Figmaは消えず、AIで爆速化する」が当てはまるでしょう。

加えて、大規模な案件ほど、担当者 → マネージャー → 部長 → 役員、というように、複数の役職が順に確認しながら意思決定が進むケースが多くあります。「誰に・どの順番で・何を見せて合意を取るか」という人間同士の調整プロセスは、AIで丸ごと代替するのが難しい部分です。
各段階で「ここはこう直したい」という指摘が入り、その都度すり合わせていく——この往復は、関係者が多いほど工数として残ります。
だからこそ、各役職に見せて納得を得るためのデザイン(確認用の成果物)も、ここでは省略できません。
大規模案件は、AIで一気通貫、とはいきにくい領域なのです。

一方、小規模で直接取引・ブランド寄りの制作なら、間に挟まる工程が少ない分、「デザインで合意する → そのまま実装する」までの距離が一気に縮みます。
さきほどの家の例で言えば、図面を見せて合意するステップは残しつつ、そこから完成までを一気に詰められる、というイメージです。
設計から実装までを一人〜少人数で一気通貫できるチームは、「上流に張る」と「高効率な実装者」の両方を同時に握れます。
これは分業前提の大きな組織には簡単にできない、小さいチームの構造的な強みです。

AIで制作工数が下がるということは、一人で回せる案件が増えるということでもあります。
手を動かす“作業”の価値が下がるのは確かに痛いですが、顧客理解・提案・デザインでの合意形成・統合実装という、もともと小さいチームが握れる領域は、そのまま価値が残ります。

まとめ:煽りは割り引く、危機感は持つ

  • AIによるWeb生成の実用化は事実であり、「叩き台はAI」が前提の時代になります。
  • ただしSNSの「オワコン」煽りは、情報商材系への誘導や大手のポジショントークが多いため、まずは割り引いて読みましょう。
  • とはいえ「作業」のコモディティ化による単価下落は起きるため、本質的な危機感は必要です。
  • 都合の良い予測に飛びつかず、自分自身の立ち位置を客観的に見つめることが大切です。
  • 「上流=安全」とは限りません。コンサル業界もAIによるコモディティ化で淘汰が進んでいます。
  • デザインは「作る前に合意する工程」として残ります。消えるのは作る手間であって、確認の必要性ではありません。
  • 進む道はコンサル化だけでなく、AIを使いこなす「超高効率な実装者」も有力な選択肢です。
  • 小規模・直接取引のチームなら、設計と実装の両取りでむしろ追い風にできます。

最後に、自分自身がいまどうしているかも書いておきます。すでにAIは「敵」ではなく「叩き台製造機」として使っています。提案前に方向性の違う案を数パターン出して合意を先に取る、曖昧な要望をその場で見える形にして、言葉ではなくビジュアルで議論する、実装の足回りはAIに任せて、自分は統合とチューニングに集中する。作る速さを競うのではなく、決める速さと、最後まで動かし切る精度を上げる——いまはそこに時間を寄せています。

煽りに飲まれず、かといって油断もせず。手を動かす速さだけでも、上流に逃げるだけでもなく、「何を作るべきかを決める力」と「それを破綻なく実装し切る力」の両方に張っていく——というのが、いま現実的な構えだと思います。

この記事について

出典・参照データ

ダブダブダブは、デザインと戦略をことばで伝えるサイト制作を行っています。

Webサイト制作の価値が決まるのは、公開してからです。
だからダブダブダブは、どれだけビジネスの成果につながるかを考えて制作します。制作に入る前には「戦略フェーズ」という時間をとり、お客さまの事業や課題をじっくり一緒に掘り下げます。納期や仕上がりはもちろん大事。でも、その先の成果まで見すえてつくることが、私たちの役割だと考えています。 サイトをつくるだけでなく、その後の成果まで一緒に考えてくれる。事業の話から相談できる。そんなパートナーをお探しなら、ダブダブダブにお声がけください。

Writer

稲葉 恭平Designer

この記事を書いた人

稲葉 恭平

1986年愛知県生まれ。制作会社での3年間のキャリアを経て、2014年に「ダブダブダブ」として独立。 デザイナーとしての感性を軸に、戦略立案からマーケティング、そして最終的な実装までを一貫して手がけています。 私の強みは、上流工程の「戦略」…

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